トップバッターのH氏、K氏らの車を見送り、二番手の私達には四十分程の待ち時間が与えられました。修了検定と違って先行車がどのような運転をしているかは見ることができません。イメージトレーニングや教習手帳の確認を済ませ、「ここまできたらもうやるほかはない」と、相乗りをするW氏と決意表明を交わします。
乗る前はどうなることやらと漠然とした不安がありましたが、一旦乗ってしまえばさほどの緊張感もなく、ただいつも通りの運転がそこにはありました。スピードを本来出すべきところをあまり出せていない、停車で路側帯侵入スレスレまで近づく、といった細かなミスはありましたが、さして気にするほどのことでもない、そのほかは十分にできていたから問題ないさ、などとタカをくくり、さも既にパスしたかのような気持ちでおりました。果たしてそのまま突っ込んで大丈夫なのでしょうか。
路上運転に引き続いて、教習所内で縦列駐車が行われました。普段のように駐車するスペースの右前の地点からバックし、目印が見えたらハンドルを左に目一杯切り、再度真っ直ぐに戻して今度は右に目一杯……と思って視線を移したところで、それは起きていたのです。車体の左側が掠めたのでしょうか、目印となる黄色いポールが僅かに振動していたのです。なんだそれだけのことかとお思いになる諸兄もいらっしゃることでしょう、しかしこのポール、ぶつけたら検定即中止との謂れのある、実に悪名高きオブジェクトなのであります。あれ?もしかしてぶつかった?いやしかし終わってないし……それとも不合格確定?と、頭の片隅に嫌な引っ掛かりを残して、卒業検定は終了いたしました。
合格発表まで再びしばしの休息。この短いような長いような待ち時間がまた中々精神的にしんどいものがあるのです。私は私でポールにぶつかったかどうかが気がかりなのですが、同乗したW氏は自分のターンにおいて二度ほどエンストしたことを悔いていて、本当に大丈夫なのかこれは、全員が延泊せずに帰れるのか……と、薄っすらとした不穏なムードが辺り一面に漂っているように思われました。
定刻になり、合否発表の放送が流れてきました。我々四人の受験番号は1番から4番で、私は4番でした。
「卒業検定、本日受験された方……」
運命の分かれ道です。
「1番から……」
1番から……?何番まででしょうか。このタメの時間が最も緊張したように覚えています。
「……31番までの方、合格となります。」
……我々四人は手を取り合って喜びました。それはまるで幾千もの戦いを共に乗り越えてきた戦友のように。この瞬間、思い出す度胸熱く、何度天を仰ごうとて我が感嘆止む術無し……
その後、最後の昼食(二枚ほど余っていた食券をカレー2杯に使いました。ここの食堂のカレーは独特の甘みがあり非常に美味です)、涙の卒業式を経て、仮免許と卒業証書と初心者マークをさながらスターターキットのごとく手にします。一歩成長した我々は、紺碧色の共同生活への追憶と、またいつか山形へ来た時、再びこの地を訪れようという期待を胸に秘めてバスに乗り込み、ついに長かった山形での生活に終止符を打つことと相成りました。
この二週間を、我々は決して忘れることはないでしょう。
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ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。免許合宿編は以上にて終了となりますが、地理愛好会は他にも様々な活動を行っており、このブログではその一端を公開させていただいております。興味を持たれた方は、ぜひ他の記事も読んでみてください。(T)
